今回は、白人最初のロックンロールヒットを出した、ビルヘイリー&ヒズコメッツについて。
1-4「ロックンロール誕生前夜~Rockin' All Day」より続く

また、白人ミュージシャン達の中にも黒人向けリズムアンドブルースが白人ティーンエイジャーにも好評を得始めた状況を察知して、自分達の演奏にリズムアンドブルースの要素を取り入れ始める者が出てきた。こうした現象は白人向けの音楽でもカントリーやウェスタン、ヒルビリー等世間ではポップスなどに比べ品がない、とされていたジャンルから発生した。そしてジミーロジャースやムーンマリカンといったカントリーやウェスタンスウィング、ヒルビリー等白人畑の音楽シーンでリズムアンドブルース的なことを意識していた連中の中でもビルヘイリー&ヒズコメッツが白人では最初にロックンロールのヒットを出したバンドとなった。

元々サドルメンというウェスタンスウィングのバンドを率いていたビルヘイリーは、ミュージシャンの傍らDJをやっているときに、白人ティーンエイジャーから黒人リズムアンドブルースのリクエストがあった事をきっかけに、自らのバンド名をカントリー的な「サドルメン」からリズムアンドブルース的な「コメッツ」に改名し、リズムアンドブルースのバンドを参考に楽器の編成を変え、サウンドもリズムアンドブルース的なバックビート(1小節を4つのアクセントに分けた時に2番目と4番目のアクセント)を強調するようなものに変化させた。そしてジョーターナーJoe turnerの「シェイクラトルアンドロール Shake rattle and roll 」やジャッキーブレンストンのロケット88 Rocket88 等リズムアンドブルースのカバーを取り入れつつ、いくつかのヒットを出した後、1955年「ロック アラウンド ザ クロック/Rock Around The Clock 」で全米ナンバーワンを獲得する。

この曲は映画「暴力教室 Blackboard Jungle」に使用された事が全米ナンバーワンになった大きな要因だった。この映画は55年当時の反抗するティーンエイジャーによって荒れる学校を舞台にしたものだったが、この時期、画一化されたアメリカが形成されていく片隅でビート族やティーン等一部の、既存の社会に対する反発の空気が少しずつ表面化しつつあった。映画の世界ではレザーを身にまとったバイカー集団が静かな町を荒らすマーロンブランド主演の「乱暴者(あばれもの)/Wild One」(1954年)や反抗的だが孤独が付きまとう青年をジェームスディーンが演じた「理由なき反抗/Rebel Without A Cause」等「アンチヒーロー」を扱った映画が公開されティーンたちの好評を得ていた。

そして1955年、ジェームスディーンがまるで自らの主演映画の主人公さながらに生き急ぐかのように愛車のポルシェスパイダー550で交通事故死すると、彼はティーンエイジャーの間で伝説のヒーローとなった。又低予算で作られるモンスターや宇宙人が人々を襲うホラー映画や、どぎつい色彩やタッチで描かれたモンスターが残虐に人を襲う内容のコミックスが流行る等、リズムアンドブルースやロックンロールに限らず「過激な表現」がテクノロジーの発達とともに加速をつけて表れ始めたのだった。

  

「暴力教室」の当時の宣伝。原題の「blackboard jungle」をカッコいいと思う人は結構いるようで、今じゃ殆ど知る人はいませんが、93年頃LAのローカルハードロックシーンで結構人気を集めた同名バンドがいました。ともかくR&Rなイメージのフレーズです。
 

理由なき反抗の宣伝。皆が憧れるこの映画のディーンの服装ですが、着ているのはよく言われるマクレガーのスウィングトップ、ではなく同じマクレガー社の別製品だとか。いずれにせよジェームスディーンの佇まい、ファッション、ストーリーが上手く相互作用してこの映画を名画たらしめているのでしょう。


さっきの暴力教室もそうですが、この辺の映画というのはロックンロール的なセンスを刺激するらしく、KISSのジーンシモンズのバックアップで1987年に鳴り物入りでRCAからデビューしたものの見事にコケたポップハードグラムバンドのSilent rageが、この映画の原題である「Rebel without a cause」をもじった「Rebel with a cause」という曲を出しています。ビデオまであるという事はアルバムの中でもプッシュしたい曲だったのでしょう。


そしてマーロンブランドの「乱暴者」原題はThe Wild one。2つのバイカーギャングが対立する話ですが、各々ギャング団の名前がBlack rebel motorcycle clubとBeetles。前者は90年代以降活躍しているバンドに使用され、後者は・・・言うまでもありませんね。


1-6「ロックンロール誕生前夜~Rockin' All Day」に続く

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