Double Barrel Rock N Roll Show

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カテゴリ: The Golden Age of Rock and Roll

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今回は、ロックンロール登場前夜のアメリカの時代背景に迫ります。

1-1「ロックンロール誕生前夜~Rockin' All Day」より続く

ロック、ロックンロールが人々の間で認知されるようになったのは1950年代のアメリカでのこと。当時のアメリカは第2次世界大戦の戦勝国として非常に豊かで、多くの人々が「中産階級」に属し、経済やテクノロジーの発展と共にかつてどんな国もなし得なかったような繁栄を誇っていた。人々は大都市郊外の新興住宅地で「快適な消費生活」を送っていた。

その一方国民は冷戦の状況下、常に核の脅威に怯え、その不安を取り除くため核戦争を想定したフィルムが作られ学校では核戦争等の非常時に備えての訓練が行われたり、人々はやっと手に入れた平和な生活を謳歌しつつも、それがいつ崩れるとも知れない恐怖に苛まれ続ける・・・という矛盾に満ちた生活を送っていた(この辺は一連のマイケルムーア映画に参考になりそうなことが描かれている)。 不安だから「守り」に入り、自分達とは異質に見えるもの、共通の敵を作り出し攻撃する・・・というようなシステムにより非常に保守的な空気が流れ、黒人に対する人種差別は依然として、特に南部で激しかった。白人と黒人では行く学校が分かれていたり、バスの座席も「黒人用」「白人用」に分かれ、トイレに至っては、「白人男性」「白人女性」「黒人」というような区別があり、あらゆる部分で合法的に差別が行われていた。

そうしたあり方は、音楽業界も同様だった。 50年代のアメリカでの放送フォーマットの分け方は「白人向けのポップス」、「白人向けのカントリーやウェスタン」、そして黒人向けの「レイスミュージック」となっていた。レイスというのは「人種」という意味で非常に蔑視に満ちた呼称であった。黒人によるジャズもブルーズもリズムアンドブルースも「レイスミュージック」の一言で片付けられていた。そしてこのレイスミュージック、とりわけブルースやリズムアンドブルースは白人の社会では「教育上良くない、罪深く聞いてはいけない音楽」とされていた。故に白人に有利なようにシステム化された全米のラジオやナショナルチャートにこれらのブルースやリズムアンドブルースが登場する事はなかった。また当時は少しでも「暴力、セックス、政治問題、飲酒、ドラッグ」等を連想させるような言葉や行為は放送の世界ではご法度であり、セックスや、飲酒にやドラッグに関する内容をストレートに歌詞に含む事が多いリズムアンドブルースや政治問題等を扱う歌詞が多いフォークソングはTVやラジオでは敬遠されていた。

多数派で豊かな「中産階級の白人」達はテクノロジーの発達と共に続々と発売される車や冷蔵庫や洗濯機や電話機・・・等と共に手に入れたラジオで無害な「白人向けのポップス」を聞き、テレビでは家族全員でやはり無害な番組を見ていた。当時のアメリカの娯楽の主流は分別のある大人達によって検閲された「消毒済みの娯楽」であった。テレビも音楽も物事の暗部から目をそむけ、人々は暗い現実に直面している人や物を切り捨てた。第二次大戦での、未だ癒えぬ、精神的な部分も含めた後遺症や冷戦による核の脅威という恐怖にさらされている人々にとって娯楽は明るく楽しく、無害なものでなくてはならなかった。  国の多数派を占める中産階級の白人達は、核の脅威に怯えつつも都市郊外の住宅で消費生活を謳歌し、無害な娯楽で気を紛らわし、豊かな社会から落ちこぼれる事のないよう、日常生活を送っていた。

以下は1940~50年代のアメリカの生活を当時の映像を使用しまとめた映像。雰囲気が伝わってきます。これを見ると細かい違いはあるものの基本は現代まで同じことが繰り返されているのが良くわかります。第二次大戦後、しばらくはアメリカの一部であり、独立後もアメリカから多大な影響を受けていた我が国も今に至るまで生活の基礎は一緒なのだと言う事が良くわかります。


1-3「ロックンロール誕生前夜~Rockin' All Day」に続く


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ロックンロールの歴史を紐解く連載「The Golden Age of Rock and Roll」をアップデートしていきます。

まずは筆者のMister Gからのご挨拶です。

これを書いているのは2014年6月9日(月)0:34...。偶然にも6月9日は「ロックの日」です。これも何かの縁か、はたまたロックの神の思し召しかはわからない...というかどうでもいいですが、一口にロックと言っても人によって想像するものがかなり違ってきているのではないかと思われる昨今、これこそが保守本流だと断言できる真・ロックヒストリーを紡いでいきます。

とは言え、同時にロックヒストリーの類いもある意味こじつけのような側面もあったりします。過去のロックミュージックに関して色んな印象深いことがあって、暇な人たちが集まってその要因を探ったらこういう筋道を考えるのが妥当なんじゃないか?ぐらいな感じで構築されたヒストリー・・・という風に考えるのが自然でもあり、ロックヒストリーの現場に立ち会っていた当事者たちの多くは自分がロックヒストリーの重要な瞬間に生きているという実感はほとんどなかったでしょう。

個人的には所詮ロックヒストリーなんて業界や音楽ジャーナリズムがわかりやすい筋道を示して音楽を体系化するために存在してるものだと思います。それと関連するかどうかは知りませんが、音楽を体系化することを様々な論理的に正当だと納得できる理由をつけて嫌う「感覚派リスナー」が多くなってきて(というより殆どがこの数年のトレンドで、だと思いますが)おり、ある意味ロックヒストリーを書くことなど時代に逆行する行為なのかもしれないのですが、あまりに手前勝手な音楽の聞き方が蔓延すると、ロックを取り巻く環境自体が崩壊しかねないので、最低限頭に入れておくべきロックの基礎として、この連載を読んでいただければ幸いです。

もしかしたら今まで映画で謎だったちょっとしたワンシーンや俳優の台詞、持ってる曲の歌詞の不明な部分や小説で意味のわからなかった一節の謎が解けるかもしれません。

1-2「ロックンロール誕生前夜~Rockin' All day」に続く

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