今回は、ビート族の登場とリズムアンドブルースの白人ティーンエイジャーへの浸透について。
1-2「ロックンロール誕生前夜~Rockin' All Day」より続く

しかし中にはこのような社会に対して背を向けた者達もいた。彼らは「ビート族」と呼ばれ、その中からアレンギンズバークやジャックケルアック等ビート作家が登場した。彼らは「豊かで安定した物質主義の生活」という共同幻想に疑問を抱き、そういった連中により構成された一般社会に根深く存在する品性のなさや、偽善、グロテスクさを認識し、そういったものからは距離を置くスタンスをとっていた。

ビート族は表立って社会に反旗を翻すような事はせず、社会からドロップアウトする事によって社会に無関係でいようと努め、黒人のスラングを使い、性のタブーを犯し、マリファナを吸い、東洋哲学や宗教に入れ込み、レースミュージックを聞き、間抜けで無価値な俗世間から忌み嫌われている事にことごとく挑戦する事によって社会に反抗し、自らの意思表示をしていた。こうした動きは、カウンターカルチャーとして画一的な社会に疑問を抱く一部人間に支持されていた。

そんなビート族が切り捨てた「多数派の」アメリカ中産階級の白人達の息子や娘達の世代の10代のティーンエイジャーの若者達の中には、ビート族と同じく、既成の社会や価値観を自分たちに押し付けようとする両親や社会に反抗心を募らせる者が出てきた。彼らの兄や姉の世代の若者達は両親の言うことを良く聞き、大学に入って、学生時代は男子学生が女子寮に忍び込んで下着を持ってくる「パンティレイド」のような、社会が「よくある青春の1ページ」として許容する類のゲーム等に興じ、就職の時期がやってくればあっさりと就職をし、「豊かな社会」の一部となり社会を動かす歯車の一部となっていった。

ティーンエイジャー達の中には、そんな兄や姉達の姿を見て漠然とながら疑問を抱き、大人達が受け入れているような「ファミリー向け」ではなく、「自分達のための音楽」を求める者が出てきた。そんな彼等が見付けたのが黒人向けのリズムアンドブルースだった。

彼等の多くは両親が中産階級に属し、生活自体は豊かだったので、テクノロジーの恩恵を受け、自分専用の小型の「トランジスタラジオ」を持っている場合も多く、それを黒人向けのレースミュージックのチャンネルにあわせればリズムアンドブルースを聴くことが出来た。そして彼等は黒人のリズムアンドブルースが持つスピード感やグルーヴに夢中になり、親に隠れてラジオを聴きレコードを買いに走った。こうした背景の中、黒人のリズムアンドブルースをカバーした白人のレコードがヒットしたりもした。黒人グループ、コーズChordsの「シュブーン/Sh-boom」が白人コーラスグループのクルーカッツによってカバーされ大ヒットするなど、少しずつ間接的な形でリズムアンドブルースが表舞台に出つつあった。

参考 ChordsのSh-Boom こちらが本家オリジナル。この映像でもわかる通り、映画「Cars」でも効果的に使われていました。



クルーカッツのSh boom 比較するといかにも白人的で「漂白された」という表現がピッタリのサウンドですが、白人社会にも黒人リズムアンドブルースのサウンドが徐々に入り込みつつあったのがわかります。


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