ロックンロールキング、エルヴィスが登場しようとする正にその瞬間のお話。
1-5「ロックンロール誕生前夜~Rockin' All Day」より続く

そのような中、徐々に全国区で白人社会にじわじわと浸透し始めたリズムアンドブルース~ロックアンドロールは、人々に「反抗の音楽、罪深い音楽」との認識を植え付け、アンチヒーロー映画やホラーコミックス等と共に「50年代アメリカのB級文化」的な物の一つとして存在していた。実際に「暴力教室」の上映中にティーンエイジャーによって暴力沙汰が起きるような事があると世論は一斉にロックアンドロールを槍玉にあげた。

「ロックアラウンドザクロック」が全米チャートのナンバーワンになったのは、ビルヘイリーが白人のカントリー畑のミュージシャンであり、それ故音源が映画に使われ、音楽業界やショウビジネスの世界に行き渡り、ラジオ等でもかかり人々に広く浸透したからであった。とはいえ彼はすでに30歳を超えたベテランで、所帯まで持っており、「シェイクラトル&ロール」をカバーする際原曲の詞の性的な表現を「人々の気分を害したくない」という理由で削除するような分別のある大人であった。ティーンエイジャー達にしてみればとても自分達の世代の代弁者となるに足る存在ではなかった。ティーン達が待ち望んでいたのはジェームスディーンのように反抗的で、ロックアンドロールのスピードやスリルを体現できるような自分達と同世代のヒーローだった。そんな時代の要請に応えるかのように登場したのがエルヴィス プレスリーElvis Presleyだった。

ビルヘイリーの映像。めいっぱい若作りしていますがティーンのアイドルになるにはちょっとキビしい感じです。この時点で彼は30歳なのですが、今の感覚だと40過ぎのオッサンに見えます。ベテラン感が満載で、その分演奏は安定しています。ただ、小中学生でもどんどんデビューする今と違って「エンターティナーは基本的には成人」が当たり前の時代でもあったので特に違和感はなかったと思われます。
メディア自体、ラジオが中心で特に音楽界では「視覚面」を重視する事はそこまで重要でもない時代だったのでしょう。



2-1「エルヴィス登場~Brown Eyed Handsome Man」に続く

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